食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されます。
もっとも多い免疫学的機序は特異的IgE抗体の関与するIgE依存性反応です。
よくご存じのアレルギー血液検査というものは、この特異的IgE抗体がどれくらい血液中にあるか測定しているわけです。気をつけないといけないのは、血液中に特異的IgE抗体が存在することがすなわちアレルギーというわけではないということです。
これは「感作」と呼ばれ、以前アレルゲン(抗原)に曝露されたことにより、アレルギーを生じる準備ができていることを意味しています。実際に発症するかは血液検査だけでははっきりわからないため、まだ食べたことのない食品で検査を行った場合には、結果の解釈は慎重にすべきと思われます。
食物アレルギーによって誘発される主な症状には、じんましんなどの皮膚症状、目がはれたりする粘膜症状、咳などの呼吸器症状、下痢などの消化器症状、意識障害などの神経症状、血圧低下などの循環器症状があります。
これらのうち、複数臓器に全身性アレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応をアナフィラキシーと呼びます。少し難しいですが、「重い症状が2つ以上の臓器にまたがって出現するとアナフィラキシーという定義になる」と考えていいと思います。
赤ちゃんの原因食物の多くは鶏卵・牛乳・小麦ですが、年齢が上がるにつれてピーナッツ・果物・ソバ・甲殻類などの割合が増えてきます。
一般的に赤ちゃんの鶏卵などの自然耐性化率(自然に症状が出なくなる可能性)は高いと考えられ、日本のある調査によると、鶏卵の耐性化率は3歳で30%、4歳で49%と報告されています。すなわち鶏卵アレルギーと診断されたこどものうち、およそ3人に1人が3歳までに症状が出なくなるということです。ただし、特異的IgE抗体値の高さや誘発症状の重さ、アナフィラキシーの既往などにより耐性化率は異なると言われています。
食物アレルギーのリスク因子として、家族歴や皮膚バリア機能の低下、離乳食開始を遅らせることなどがあります。
これらのなかで、皮膚と食物の関係が近年注目されており、「経皮感作」といって、接触などによる食物抗原への曝露は少量であっても皮膚からアレルゲンに対する感作を誘導しやすいと言われています。赤ちゃんの食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は合併していることも多く、湿疹のコントロールがよくないと食物抗原に対する感作を誘発しやすい状態であると言えます。
また離乳食に関して、現時点で離乳食の開始を遅らせることで食物アレルギーの発症を予防する効果は証明されておらず、日本小児アレルギー学会では離乳食の開始は生後5-6か月が適当としています。同様に妊娠中や授乳中の母親の食事制限も推奨していません。
食物アレルギーにはまだまだ解明されていない点も多く、不確かな情報やおうちの方の不安につけこむようなものもあります。
ご不明な点はお気軽にご相談ください。
Copyright© あんずこどもクリニック. All rights Reserved.