「アトピー性皮膚炎」は一般的にもよく聞く言葉ですが、いざ実際にこどもが診断されたら、戸惑われるおうちの方は多いのではないでしょうか。
アトピー性皮膚炎の定義は、世界各地で時代とともにいくつかの診断基準とその変遷がありました。日本皮膚科学会の定義では、「増悪・寛解を繰り返す、掻痒(かゆみ)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ」となっています。要するに、悪くなったりよくなったり症状には波があり、なおかつ痒いということが重要です。
アトピー素因とは、アレルギー疾患の家族歴や既往歴、またはIgE抗体を作りやすい素因と定義されます。これだけ見ると、比較的多くの方がこの定義に含まれそうな印象です。
診断基準を詳しく見ていくと、
の3項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断するとなっています。
少しであっても湿疹があり、掻いていて、それを繰り返すようであればアトピーとなるわけですから、おうちの方は病院でアトピーと言われびっくりされる方も多いでしょう。
ただ実際の診療の場において大切なことは病名がつくことよりも、いまこどもに何が起きていて、どのような対処ができるのか、ということだと思います。
当クリニックではそのように考えて日々診療をしています。
では、アトピー性皮膚炎の皮膚では何が起きているのでしょうか。
皮膚の表面に近いところで、リンパ球という白血球の一種を中心としたアレルギー細胞がたくさん集まって炎症を起こしているのです。炎症はダニやホコリなどのアレルゲン、皮膚についた細菌、汗、汚れ、動物のフケなどさまざまな原因で起こります。またアトピー性皮膚炎の皮膚は、皮膚のバリア機能が低下しており、その原因の一つが遺伝子変異です。日本では患者さんのおよそ4分の1にこの変異があるという報告があります。
では、アトピー性皮膚炎の治療にはどのようなものがあるのでしょうか。
炎症というとわかりにくいかもしれませんが、炎症を火事に例えて、皮膚では湿疹という火事が起こっていると考えてみましょう。
火事を消すには消火活動が必要です。この消火活動を行う消防隊が、ステロイド外用薬です。
ステロイド外用薬は大きな火事も消してくれますが、火事の勢いが少し弱まったからといって途中でやめてしまうと残った火からまた火事の勢いが増してしまうため、完全に火が消えるまでしっかり塗る必要があります。
最近の研究で、次の火事を起こりにくくする対策方法として、ステロイドによる定期的な見回りが提唱されています。すなわち湿疹の出やすい場所に週に数回程度お薬を塗ることで、湿疹が出にくくなるのです。このようにして湿疹のない状態を保つことで、皮膚のバリア機能が回復してくるのを待ちます。
お薬だけでなく、お掃除でダニ対策をしたり、生活の見直しも必要かもしれません。患者さんによって原因や悪化要因は様々なので、ご一緒に対策を考えていきましょう。
Copyright© あんずこどもクリニック. All rights Reserved.